2019/05/14 20:41

最終更新日:2022年10月31日


鈴木茂さんは1970年にはっぴいえんどのメンバーとしてプロデビュー。その後ティン・パン・アレーの一員として、荒井由実さんをはじめとする様々な歌手やアーティストのレコーディングやライブにギタリストとして参加。他にも編曲家やプロデューサーとしての顔を持つなど音楽の様々な面で活躍。近年では星野源さんや松任谷由実さんのライブへサポートギタリストとして参加。さらに自身のソロライブや共演ライブ、グッズ製作に熱い力を注いでらっしゃいます。


鈴木茂さんは自身のソロアルバムを1975年発表のファーストアルバム「BAND WAGON」から、今のところ最後のアルバムにあたる1985年発売の「SEI DO YA」まで計7枚を発表。

アルバムの発売当時、LPと並行してカセットテープも発売されていました。しかしLPは現存枚数が多いため現在でも入手がし易いものの、カセットは販売数が少なかったため現存数が極めて少数。ここでは現在まで現存確認がとれている鈴木茂さんの様々なカセットテープを綴ります。


・オリジナルアルバム編

当時の歌手やアーティストのオリジナルアルバムのカセットテープは、曲順がちゃんと守られていたLP版と異なり、当時のカセットテープは製作者の意図に関係なく、テープの残量や分数を優先にしたレコード会社独自の曲順となっていることが多くあります。鈴木茂さんのオリジナルアルバムにも同様の編集がなされているカセットテープが多く存在。なお、鈴木茂さんのオリジナルアルバムのカセットテープの現存数はかなり少く、特に持ち歩きカセットプレイヤーが主流になる前の日本クラウン時代のアルバム(BAND WAGONからCOSMOS'51)のカセットテープは特に少ない。



「BAND WAGON」 1975年3月25日発売
はっぴいえんど解散後、ティンパンアレーとして活動していた時期に単身で渡米しレコーディングしたファーストアルバム。言わずと知れた大名盤。

カセット版のジャケットには「鈴木茂 ファースト・アルバム」とは大きく印字されていて、LP版は「Tin Pan Alley」のロゴが「右下」にあるが、このカセットのジャケットは「左下」にあり、LP版とは逆の位置に配置されている。
曲順はオリジナルどおり一曲目に「砂の女」があるものの、他はカセット独自な曲順となっている。ここに収録されている「スノー・エキスプレス」は他で聴けるものよりも約1分程長く収録されている。また歌詞カードは付属しているとの表記がない事から付属していなかった可能性が高い。
品番:DCC-2013


「BAND WAGON」PONY版
本作にはカセットテープがもうひとつ存在する。このアルバムを発売したのは日本クラウンなのですが、表記に株式会社ポニーとあるのは当時日本クラウンではミュージックテープの生産工場を自社で持たず、ポニーに製作を委託していたため。しかしポニーと表記されていないカセットジャケットもある。(「CUT BACK1975~1979」のカセットジャケットにはポニー表記あり)。ジャケット写真はオリジナルジャケットではないものを使用しており全体的に銀色。さらにアルバムタイトルの「BAND WAGON」の文字はなく、「ティン・パン・アレー」のカタカナ文字が大きく強調されている。上記のDCC-2013版のカセットとは一部曲順が異るがこのカセットの方がオリジナルに曲順は近いです。
品番:CE 9010


ティン・パン・アレー「キャラメル・ママ」1975年11月25日発売〔ポニー版〕
このアルバムは鈴木茂さんソロのアルバムではないものの、ソロキャリアの中でも大事なアルバムなので追加致しました。

はっぴいえんど解散後、細野晴臣さんと茂さんの他に、松任谷正隆さん、林立夫さんの4人で結成されたバンドのファーストアルバム。

茂さんのファーストアルバム「Band Wagon」の録音・リリースを終えた後、次作の「LAGOON」との間に制作されたアルバムで、メンバーが2曲づつ持ち寄りアルバムにした本作には、鈴木茂さんは南佳孝さんとのツーボーカル曲「ソバカスのある少女」と「はあどぼいるど町」を収録。

ジャケットはLP版のものとは大きく異なり、確実にジャケット用ではないメンバー達の写真が使用されて、大きく載せられている所に脱帽です。
オリジナルにはA面「ソバカスのある少女」を収録していますが、このカセット版では「はあどぼいるど町」と交換になっています。現存数はかなり少ない。
こちらでは〔2022年10月現在〕発掘されていませんが、このポニー版の他に、恐らくクラウン版も存在すると思われます。
品番:CE 9037


「LAGOON」1976年12月5日発売
ハワイで全編録音された本作は前作とは作風が変わりトロピカルで爽やかな印象が全体に広がる。今でも人気が高いセカンドアルバム。

ジャケットに白が前面に出されたLP版とは異なり、カセットテープ版のジャケットは黒が全体的に強く、曲順もLP版とは異なり、本人が写っている写真も別のカットを使用している。またファーストアルバムとは違いカセットハーフ(本体部分)が赤になっています。
品番:DCT-2139




「LAGOON」PONY版
本作にも「BAND WAGON」と同様にPONY版のカセットテープが存在する。このカセットもジャケット写真やタイトル文字の形はPONY独自の仕様となっている。このカセットもオリジナルと曲順が一部異なるが、わりとオリジナルに近い。裏の曲名が「Lady Pink Panther"s"」と一部誤記がある。また、品番がPONY版の「BAND WAGON」と比較的近いことから、2タイトルが近い時期にリリースされたのものと考えられます。
品番:CF 9013





「LAGOON」SUPER COMPO版 1980年発売
ティン・パン・アレーの空中分解後に結成したYMOで、細野晴臣さんがブームしだした1980年、ティン・パン・アレーが所属していた日本クラウンが、関連アルバムの再発などをしていた時期にリリースされたカセットテープ。下記の「ティン・パン・アレー「イエロー・マジック・カーニバル ティン・パン・アレーグレイテスト・ヒット」と品番が近いことからそのアルバムと同時期にリリースされたと推測される。このテープの素材には「SUPER COMPO」と名付けられた高音質テープを採用。また、「LAGOON」のカセットテープのジャケットは別カットの写真が使用されているものが多かったが、このカセットで初めてオリジナルジャケットが使用された。さらに曲順はオリジナルどおりとなっています。
品番:DT-2009


「Caution!」1978年1月25日発売
「レイニー・ステーション」や「ジュリエット」などキャッチーでどこか親しみやすい曲が多く収録された3枚目のオリジナルアルバム。

LP版のジャケットでは顔が大きく載せられているが、カセット版のジャケットは上半身が大きく写っている。曲順も一部LP版と異なる。またこのカセット版からスリップケース(プラスチックケースの外側にあるスライド式の紙ケース)になり、このアルバムからカセットのジャケットには「鈴木茂アルバム〇〇」と何枚目のアルバムかが大きく印字されるようになります。
品番:DCT-2237





「TELESCOPE」1978年11月25日発売
ファンの間で人気の高い曲が多く収録されている本作は、「BAND WAGON」の製作時に共演が叶わなかったベーシストのチャック・レイニーが参加している。

LP版のジャケットは横向きでジャンプをしているものが使用されているが、カセット版のジャケットは、またLPと異なる別ショットを使用。またカセットハーフが黒色となり、今作で初めてオリジナルと一緒の曲順になっています。
品番:DCT-2383





「WHITE HEAT」1979年2月発売
ビクターよりリリースされた今作は「ボーカリスト 鈴木茂」としてではなく、「ギタリスト&作曲家 鈴木茂」を堪能できる全編インストによるアルバム。

ジャケット下部にあるBIPHONIC(バイフォニック)とは、それまで音の立体感をバイノーラル方式というヘッドホンでのみで味わうことを目的としたものでしたが、これをスピーカー再生で実現させたという当時の画期的な技術のこと。
今作は曲順やジャケットなどにカセット用の変動はありません。
品番:VCF-1532


「COSMOS'51」1979年9月5日発売
「1951年に生まれた人間の音の世界」と意味合いで’51と名付けられた日本クラウン在籍時ラストアルバム。本作はエレキなギターサウンドが全曲を通して響き渡ります。

このカセットでは再び曲順が独自のものとなっておりLP版とは一部異なります。
品番:NCT-2005





「SEI DO YA」1985年5月21日
前作の「COSMOS'51」から約5年半の時を経てリリースされたソロアルバム。心地よい音の隙間が各曲に散りばめられているシンプル・サウンドなロックアルバム。

今作は曲順やジャケットなどにカセット用の変動はない。このアルバムのカセットテープの現存数は比較的に多いです。
品番:28P624






・企画アルバム編

オリジナルアルバム以外にレコード会社独自の選曲による企画アルバムや、カセットテープのみで発売されたベストなど様々な仕様でリリースされていた。ここでは存在が確認できている「企画アルバム」のカセットテープを綴ります。



鈴木茂とハックルバック「幻のハックルバック」1976年発売
日本のオーディオ・フェアの会場で流す用に録音された音源が収められた本作には、解散1か月前のハックルバックの演奏が収録されている。後にメンバーだった田中章弘さんが「今までレコーディングしたアルバムの中で一番思い入れの深いアルバム」として名をあげている本作。

その後LPやCDでも発売されるが当時はカセットテープのみでのリリースだった。裏面に小さく印字されている解説をよく読むと4chで収録されている事が分かる。またこのアルバムのカセットテープの現存数は比較的に多いです。
品番:DCT-2141


ティン・パン・アレー&ファミリー「ニューミュージックアートスケッチ」1978年発売
キャラメル・ママ、ティン・パン・アレーのアルバム2枚や、その後発売されたメンバーのソロアルバムから選曲されたベストアルバム。鈴木茂さんのソロアルバムからは「Caution!」と当時最新アルバムだった「Telescoop」の2枚から選曲されています。
品番:NCT-4002


ビクターBIPHONIC試聴用カセットテープ 1979年頃配布
ヘッドホンのみで音の立体感を味わうバイノーラルというサウンド方式があり、これをビクターが初めてスピーカー再生で実現させたというのがBIPHONIC(バイホニック)。このテープはその試聴用カセットテープ。A面には飛行機の離陸音や鉄道の音などを収録。そしてB面にはこのビクターよりリリースされた唯一のアルバム「White Heat」より、「ロス・アナモラドス」が選ばれ収録されている。
品番:VGT12S3-VO3 DT-720


ティン・パン・アレー「イエロー・マジック・カーニバル ティン・パン・アレーグレイテスト・ヒット」1980年発売
ティン・パン・アレーの空中分解後に結成したYMOで、細野晴臣さんがブームしだした1980年、ティン・パン・アレーが所属していた日本クラウンが、関連アルバムの再発などをしていた時期にリリースされたカセットテープ。
(ここまでは上記のLAGOON SUPER COMPOの説明文と同文)

このアルバムには当時流行っていた曲間に英語のDJを挟むという外国風のラジオ形式がとられており、小林克也さんによるDJが収録されている。このテープの素材には「SUPER COMPO」と名付けられた高音質テープを採用。ここに収録されている鈴木茂さんの曲はティン・パン・アレーのアルバム「キャラメル・ママ」からの曲と「幻のハックルバック」から選曲されている。またこのアルバムのカセットテープも現存数は比較的に多いです。
品番:DT-2001





「鈴木茂 SPECIAL」1980年発売
鈴木茂さんのカセットテープで現在確認されている唯一のメタルテープ・カセット。一応ベスト版の扱いにはなるが、メタルテープ用のためか選曲が独特なものとなっており、いわゆる「有名曲だけを集めたベスト」とは異なる。ジャケットの写真は「Caution!」のジャケット撮影時のもの。
またジャケット下部にある「ORPLID(オープリート)」とは、1979年に日本クラウンが「PANAM」を閉めて'80年代に向けて新設立した新レーベルで約2年間だけ存在した。このカセットはORPLIDレーベルから発売された唯一の鈴木茂さんのカセットテープでもある。
品番:NCTM-2007




鈴木茂 全曲集」1981年発売
日本クラウン時代のアルバムから程よく選曲されたカセットテープ発売のみのベスト版。サイドが録音場所に分かれており、A面が海外レコーディング、B面が日本レコーディング。
品番:CNT-4002




「CUT BACK 1975~1979」 1982年発売
日本クラウン時代のアルバムから選曲されたベスト。レコードとカセットが同時に発売された唯一のベストアルバム。このジャケットにも「BAND WAGONポニー版」同様、日本クラウンの表示の他に、ミュージックテープの製作を委託していた株式会社ポニーの表記がある。また曲順はLPと同一だがタイトル文字の形が違っている。
品番:28P6178


「ティン・パン・アレー BEST16」 1984年発売
ティン・パン・アレー名義のアルバムやメンバーの各ソロアルバムから選曲されたベストアルバム。同名のアルバムがCDでリリースされていますが、収録曲は別となっています。また鈴木茂さんの曲は「バンドワゴン」と「ラグーン」から2曲づつと、ティン・パン・アレーのアルバム「キャラメル・ママ」から「ソバカスのある少女」の、計5曲を収録。
品番:SET-3006



「鈴木茂 17SONGS」1987年10月21日発売
日本クラウン時代のアルバムから17曲選曲されたベストアルバム。このシリーズでは細野晴臣版もリリースされている。ジャケット写真には1979年のアルバム「Cosmos'51」時のカットを使用。またこのアルバムはCDも同時発売され、時代的にもCDの方が広く普及され始めていたため、CDは多くあるがカセットテープの現存数は少ない。
品番:SNT-3023



「鈴木茂ベスト」1989年10月5日発売
日本クラウン時代のアルバムから選曲された今でも人気の高いベスト。鈴木茂さんのカセットテープ発売はこのアルバム以後長らくされておらず、今のところはこの作品が最後のカセットテープ化となっている。曲数などはCDと変わらないが、B面のスタート曲が「レイニー・ステーション」というのが味わえるのはカセット版のみ。ジャケットの写真は「Caution!」のジャケット撮影時のものを使用。
品番:SNT-3042





「THE COMET くうきがなくなる日」1985年発表
神谷明さんや複数人の声優よる演劇の間々で鈴木茂さんの曲が流れるもの。内容は「ハレー彗星が近づき、世の中の空気が無くなってしまう世の中を鈴木茂の音楽が救う」というもの。そこで流される曲は1985年にリリースされたアルバム「SEI DO YA」から主に構成されているが、中には「ソバカスのある少女」と「ラハイナ・ガール」「レイニー・ステーション」も収録されている。またこの劇中には鈴木茂役(声:神谷明さん)も出てくる。

このカセットについては謎な点が多く様々な面で詳細不明です。白いカセットサイズの紙袋に入れられていて、上部が金具で封がされています。製作会社は「SEI DO YA」を発売したPONY CANYONとなっています。裏面には「500」と「NOT FOR SALE」との文字があるため、500個限定ではあるものの販売を目的としたものではないと思われます。
品番:DSC-179




「Gemtle Snow」1992年11月21日発売
伊勢正三や徳永英明などが名を連ねたオムニバスアルバム。このアルバムで茂さんは、編曲やギター演奏など各方面で参加。最後のインスト曲、「Gemtle Snow」は作詞作曲を手掛け、そしてこのアルバムのために作曲された「夜更けにベルを押す時は」が収録されている。
当時CDのみで発売されたこのアルバムは、販促品としてのみカセットで製作された。ジャケット写真がミニサイズにて封入されている。


・あとがき

「カセットテープでみる鈴木茂」という少し別の角度から見た鈴木茂さんを長く綴りましたが、こちらを読んで鈴木茂さんをあまり聴かなかった方や近年ファンになった方、また永年のファンの方々に「なんか面白いな、鈴木茂さんを聴いてみよう」と思って頂けたら、いちファンとしてこんなに嬉しいことはありません。

鈴木茂さんのカセットテープは一部入手がし易いものがあるものの、基本的には本当に入手が難しく、欲しいものを集めるのは一苦労です。この大事典に載っている一部のカセットは当店の所有しているものではなく、多くの方の協力や提供で実現することが出来ました。本当にありがとうございます。またこの大事典を見ていただいて「このカセットないよ!」「こっちの方が画質良いよ!」とのお声や情報提供もお待ちしております!

また鈴木茂さんのカセットテープをお店関係なく個人的に集めています(この声を一番待って願っていたりして(^^))。状態が悪かったりケースのみや本体のみでも構いません。鈴木茂さんのカセットテープでしたら何でもOKです!もちろんオークションサイトに負けない程のお値段でお高くお買取りを致します。お声お待ちしております!!

こちらよりご連絡ください!


大の鈴木茂ファン
店主